〜資格より、学びの“継続”が問われる時代へ〜
厚生労働省が「介護支援専門員(ケアマネジャー)」の資格更新制の廃止を検討しています。
制度が始まってから20年以上、介護保険の要として機能してきたケアマネの資格制度に、
大きな転換点が訪れようとしています。
では、更新制がなくなると何が変わり、どんな影響が現場や業界に及ぶのでしょうか。
目次
🧩 ケアマネ更新制とは何か
ケアマネの資格は、5年ごとに更新が必要です。
更新のためには研修を受け、修了しなければ資格を継続できません。
この仕組みは、制度創設当初から「知識の維持」「質の担保」を目的に設けられました。
介護制度や医療制度は毎年のように改定されるため、
定期的に学び直しを促す意味があったのです。
しかし現場からは長年、次のような課題が指摘されてきました。
業務を休んで研修に参加するのが難しい
受講費・交通費などの経済的負担が大きい
内容が実務と乖離している
更新のために「形だけ参加」する人も多い
つまり、「学びの仕組み」自体が形骸化しつつある現実がありました。
⚖️ 廃止が検討される理由
少子高齢化の進行に伴い、ケアマネの数は減少傾向にあります。
特にベテラン層の引退や、更新研修を機に離職する人も増えています。
厚労省は、こうした現状を踏まえ、
「資格の維持に過度な負担がかかり、結果的に人材確保を妨げている」と分析。
また、研修の内容よりも現場経験が重視されるケースも増えており、
制度としての“更新”を廃止し、代わりに“継続的な学びの仕組み”を整える方向に舵を切ろうとしています。
💬 現場から見た賛否
この議論には、当然ながら賛否があります。
賛成意見
現場の負担が減り、離職防止につながる
実務経験を通して十分にスキルは維持できる
「更新のための更新」から解放される
反対意見
知識の格差が広がる
資格の信頼性が下がる
自主的な学びに任せるのは危険
つまり、「形式的な研修」をやめることには賛成でも、
「学び自体を手放してしまうこと」には懸念が残っているのです。
📚 本来の目的は“研修”ではなく“成長”のはず
ケアマネは、制度の理解・倫理・医療知識・地域連携のすべてを扱う専門職です。
制度改定や加算要件が変わるたびに情報をアップデートしなければ、
誤ったケアプランやサービス調整につながりかねません。
更新制が廃止されても、
「学び続ける姿勢」そのものを仕組みとしてどう維持するかが、次の課題です。
もともと研修制度は「知識を止めないための手段」だったはず。
それが目的化していた結果、いま問われているのは「研修の形」ではなく、
“学びの文化”をどう守るかという本質的なテーマです。
🧭 更新制がなくなった先に見えるもの
もし更新制が廃止されれば、
資格の維持は容易になります。
一方で、質の担保をどう図るかという問題が残ります。
そのため、
定期的なeラーニングの導入
事例共有や地域カンファレンスの義務化
自主研修の評価制度
といった「現場型の学び」に移行していく可能性があります。
これは単に“緩和”ではなく、
“形式から実質への転換”とも言えるでしょう。
🔍 ケアマネという職業のこれから
制度の転換点に立つ今、
ケアマネの役割も「手続きをする人」から「生活をデザインする専門職」へと変化しています。
求められるのは、
制度知識よりも、
利用者の背景を理解する力
多職種をまとめる調整力
判断の根拠を示せる説明力
こうした“実践知”です。
資格の更新制がなくなっても、
この“実践知を磨く努力”が止まれば、制度は意味を失います。
だからこそ、「資格が続くこと」ではなく「信頼が続くこと」が何より重要です。
🗣 まとめ:形式をやめて、本質を取り戻す
更新制の廃止は、業界にとって“リセット”ではなく“問い直し”です。
本来の目的は「学び続けるケアマネを増やすこと」。
その方法が、これまでの研修という形式に縛られすぎていたのかもしれません。
これからの時代、資格はゴールではなくスタートです。
制度の形が変わっても、
「利用者の生活を支える」というケアマネの使命が変わることはありません。



