介護記録を「AIに任せる」なんて、少し前までは想像もできなかった。でも、実際にChatGPTを使ってみたら、思った以上に“仕事の流れ”が変わった。まだAI導入と聞くとハードルが高く感じるかもしれないが、実際のところ、スマホひとつでここまでできる時代が来ている。
今回は、訪問介護士がChatGPTを使って介護記録を作成してみたリアルな体験を紹介する。「本当に使えるの?」「AIに頼って大丈夫?」そんな疑問を持つ方に、現場目線で伝えたい内容だ。
目次
実験:いつもの記録をChatGPTに入力してみた
今回使ったのは、ChatGPTの無料版。普段、自分が書いている介護記録をそのまま入力して、「自然な記録文に整えてください」とお願いしてみた。たったそれだけ。数秒でAIが返してきた文章に、正直少し驚いた。
入力例:
「入浴介助。湯加減を確認後、全身洗浄実施。終了後、水分摂取を促した。」ChatGPTの出力:
「入浴介助を実施。湯温を確認し、全身の洗浄を行いました。終了後は水分補給を促し、体調に変化は見られませんでした。」
AIが出した文章は、読みやすくて、自然。いつも自分が書く記録よりも、利用者や家族が読んでも伝わる文章に感じた。
使ってみて感じたメリット
実際に数件の記録をChatGPTで試してみて、感じたのは“文章の質”よりも“気持ちの余裕”の変化だった。
- 文章がすぐ整う:硬すぎず柔らかすぎず、報告書として通る形にまとまる
- 誤字脱字が減る:自分で何度も見直す時間が不要に
- 表現の幅が広がる:似たような記録内容でも、毎回違う言い回しを出してくれる
- 精神的な負担が軽くなる:「書く」という行為のプレッシャーが減る
訪問介護は時間との戦い。1件終わって次に向かうまでの短い時間で記録をまとめることも多い。そんな中でAIが一瞬で“文章の下書き”を作ってくれるだけで、気持ちが全然違う。
「ミスが減る」「書くストレスが減る」――この2つだけでも、使う価値はあると感じた。
難しさ・課題もある
もちろん、万能ではない。試してみて感じた課題もある。
- 医療・介護特有の表現が苦手:「更衣介助」「陰部洗浄」など専門用語の扱いは注意が必要
- 個人情報の扱い:実名や住所などは入力NG。守秘義務を徹底する必要がある
- AIの文章は“完璧すぎる”:現場の温かみや、その日の空気感がやや薄れる
つまり、AIに「任せる」ではなく、AIを“使いこなす”意識が大切。AIが作った文章をベースに、最後に自分の言葉で整える――それが現場での現実的な使い方だと感じた。
実際に使ってみて変わったこと
最初は抵抗があった。でも数日使ってみると、「もうこれなしでは記録書けない」と思うほど、生活の一部になっていた。
- 文章構成を考える時間が減り、1件あたりの記録時間が約3分短縮
- 誤字チェックの時間がほぼ不要に
- 終業後に残業して記録する時間が減り、帰宅時間が早くなった
ChatGPTを使うことで、“時間のゆとり”ができた分、心の余裕も生まれた。
AIに任せることで、仕事の「速さ」よりも「余裕」が生まれたのは意外だった。
現場の空気が少し変わる
記録に追われる焦りが減ると、自然と笑顔が増える。
「今日はどんな一日だった?」と同僚に話しかける余裕が生まれたり、利用者さんとの会話をゆっくり楽しめたり。
AIを導入したのは業務効率化のためだったが、結果的に“人との時間”が増えるという変化につながった。
まとめ:AIを“敵”ではなく“味方”に
AIは介護職の仕事を奪うものではない。むしろ、介護記録のような事務的業務を支え、ケアに集中する時間を取り戻す存在だ。
「記録で疲れ切る夜が少し楽になった」「報告書を書くのが怖くなくなった」――そんな小さな変化の積み重ねが、介護の未来を明るくしていく。
AIをうまく使うことで、“ケアに専念できる働き方”を自分たちの手でつくっていける時代が、もう始まっている。



