「AIを導入したのに、現場が全くラクにならない」
「せっかくシステムを入れたのに、スタッフが使ってくれない」
「経営目線では効率化のはずが、現場からは“むしろ手間が増えた”と言われる」
――実はこうした声は、今 AIやICTツールを導入している介護事業所の中で、驚くほど多く聞かれます。
AIは「導入した瞬間に課題が解決する魔法の装置」ではありません。
AIで失敗する事業所には、いくつかの共通点があります。
この記事では、“なぜAI導入がうまくいかないのか”を具体的に整理しながら、
成功している事業所がどんな考え方で運用しているのかを解説します。
目次
■ よくある勘違い:「AIを入れた=業務効率化が終わった」
AI導入を決める側(=経営者・管理者)は、システム導入を「ゴール」として扱いがちです。
しかし現場からすれば、「新しい仕事が増えただけ」という状況が起きやすいのが現実です。
例えば、記録システムを紙からデジタルへ変えた場合:
✅ 経営者の認識:
「記録がデジタルになったから効率化できたはず」❌ 現場の実態:
「操作覚えるのに時間かかるし、結局手書きメモして後で入力してる」
「スマホ触るだけで“サボってる”と思われそうで使いづらい」
つまり 「導入」と「現場が運用できる」は別問題 なのです。
■ 失敗パターン①:導入を“経営側だけ”で決める
最も多い失敗がこれです。
経営者・管理者だけでシステムを選び、説明会だけして終わり――という流れ。
その結果どうなるかというと、
- 「現場が求めていない機能ばかりついている」
- 「毎日の業務の流れと合っていない」
- 「結局、使われない or 使っても一部の人だけ」
現場が求めているのは「便利なシステム」ではなく、“今ある負担が確実に減る仕組み”です。
■ 失敗パターン②:導入=「操作説明」で終わっている
「使い方の研修はした。だから現場で運用できるはず」という思い込み。
しかし、現場が本当に知りたいのは
- この業務のとき、実際どう使えばいいのか?
- どの場面で入力するのが最も効率的か?
- 例外対応(急変・イレギュラー時)はどうするのか?
つまり、操作説明だけではなく
「業務フローに落とし込んだ運用の設計」が欠けていることが多いのです。
■ 失敗パターン③:効果を“感覚”で終わらせる
AI導入の目的が明確に数値化されていない事業所は、高確率で失敗します。
例えば、こんな会話がよく起きます:
経営者「どう?システム使ってみて効率化された?」
現場「うーん…まぁ、前よりは楽になったかも…?」
これでは効果測定ができません。
AI導入の効果を数値で測るなら、例えばこうです:
- 1日あたりの記録入力時間 → ●分削減
- 残業時間 → 月▲時間減少
- 1訪問あたりの生産性 → ●%向上
- 紙コスト削減額 → 月●円削減
AI導入は“投資”です。投資に対してリターンが出ているかを測るのは経営の仕事です。
■ 成功する事業所の共通点:導入ではなく「運用設計」までやる
AI活用がうまくいっている事業所に共通するポイントはただ一つ。
“システム導入で終わらせず、現場オペレーションまで落とし込んでいる”
具体的には:
- 現場スタッフを導入メンバーに含める
- 「この業務のとき、こう使う」という型を作る
- ルール化・マニュアル化までセットで設計する
- 効果を“感覚”ではなく数値で測る
- 改善を前提として運用をアップデートする
つまり、AI活用は「システム導入プロジェクト」ではなく、
“業務設計の見直しプロジェクト”なのです。
■ まとめ:AIは道具。成果を出すのは“設計”と“運用”
AIは現場の負担を減らすためのツールであり、
使いこなせるかどうかを決めるのは「導入ではなく設計」です。
スタートは“AIを入れるかどうか”ではなく、
「どの業務の、どの負担を、何%減らすのか?」
――経営者がこの視点を持たない限り、AI導入は失敗します。
AIが進化し続けても、経営の本質は変わりません。
道具ではなく、仕組みを作れる事業所が勝ちます。
次回の記事では、実際に AI導入で成果が出ている事業所の
「成功している運用の裏側」を紹介します。



