前回の記事では「AI導入が失敗する事業所の共通点」について解説しました。
今回はその逆。実際にAIを上手く活用できている介護事業所の考え方と、成功のプロセスを紹介します。
多くの経営者が「AIを入れた=効率化できた」と考えがちですが、
実際に業務が変わるのは導入後の“設計”と“文化づくり”です。
目次
■ ステップ①:目的を「削減」ではなく「創出」に置く
AI導入を検討する際、多くの経営者は「時間削減」「コスト削減」を目的にします。
もちろん、それは重要です。しかし、本当に成果が出ている事業所は、目的が逆です。
❌ 時間を減らすためにAIを使う
✅ 新しい時間を“生み出す”ためにAIを使う
つまり、「削減」ではなく「創出」こそが成功の鍵です。
記録業務が減った分で、スタッフが利用者さんと過ごす時間を増やす。
空いた時間で教育・研修・発信に取り組む。
こうした“次の行動”があるからこそ、AIの効果は最大化します。
■ ステップ②:AIを“現場理解の延長線”で設計する
AI導入で成果が出る事業所は、現場理解が深い。
経営者や管理者が「現場の業務フロー」を徹底的に理解した上で、AIを設計しています。
たとえば、「記録」だけを自動化するのではなく、
- 申し送りの要約
- 訪問スケジュールの最適化
- 教育用チャットの作成
など、“現場で繋がる一連の業務”を意識してAIを組み込んでいます。
AI活用は「どこに入れるか」ではなく、「どの流れで活かすか」が本質です。
■ ステップ③:導入担当者を「AI推進リーダー」に育てる
AIを導入して終わる会社と、そこから変化し続ける会社の違いは、
社内に“旗を振る人”がいるかどうかです。
この役割を担うのが「AI推進リーダー」。
現場を知っていて、経営の意図も理解している中間層こそ、AI活用を前に進められます。
AI推進リーダーを選ぶポイント:
- 新しいことを楽しめる性格
- 人に教えるのが得意
- 現場で信頼されている
そしてこのリーダーに、定期的なAI勉強会や外部コミュニティへの参加を支援する。
「AIは好きな人が先に触れる」という文化を作るのが、成功事業所の特徴です。
■ ステップ④:数値で検証し、“改善”を習慣化する
AI導入で成果を出す事業所は、数字を追っています。
感覚ではなく、明確な指標を設定して「どれだけ変わったか」を見える化しています。
具体的なKPI例:
- 1件あたりの記録時間の削減率
- 月間残業時間の推移
- スタッフ満足度アンケート
- 利用者対応時間の増加率
AIは導入して終わりではなく、
「数字で見て、改善して、再設計する」ことで初めて文化になります。
失敗した部分を次に活かす姿勢が、“AIを使いこなせる組織”を作ります。
■ ステップ⑤:“現場の体験”を発信してブランド化する
AIを使う事業所が増えていく中で、差がつくのは「情報発信」です。
AIを導入した感想、スタッフの変化、現場のリアル。
これをSNSや自社メディアで発信することで、採用・広報・信頼すべてに良い循環が生まれます。
たとえば、「AI記録で30分早く帰れるようになった」「申し送りのミスが減った」など、
現場の声を届けることは、何よりも信頼を生みます。
AI導入は単なる効率化ではなく、“介護現場の未来を変えるストーリー”です。
それを語れる会社こそ、業界の信頼を得られる存在になります。
■ まとめ:AI導入は“経営戦略”であり“文化づくり”
AI導入の成否は、ツールではなく「経営者の意識」で決まります。
どんなに高機能なAIでも、運用設計と文化づくりがなければ結果は出ません。
成功する事業所は、常にこう考えています。
「AIを入れることが目的ではない。
AIで“人が輝く時間”を増やすことが目的だ。」
その意識を持つ経営者が、これからの介護業界をリードしていく。
AIは現場を支える“道具”であり、未来を形づくる“仲間”です。



