介護現場

介護現場で「頑張っている人ほど辞めていく」理由

──評価されない組織が抱える致命的な欠陥

まず辞めるのは、“問題を起こさない人”

ある日、急に消える。
引き継ぎは丁寧で、最後まで礼儀正しい。
そして現場だけが混乱する。

「え、あの人が?」
そう思ったなら、もう答えは出ている。

辞めたのは“弱い人”ではない。
黙って支えていた人だ。


頑張る人が消耗する職場の共通点

“頑張り”が、増税される

頑張る人には仕事が集まる。
できる人に頼る。早い人に振る。柔らかい人に押し付ける。

結果、こうなる。

  • トラブルが起きると、まずその人が呼ばれる
  • 新人が来ると、まずその人に教育が乗る
  • 連絡が遅い職員の尻拭いを、その人がする
  • 利用者・家族の“面倒な案件”が、その人に回る

評価はどうか。
「助かるわ〜」の一言で終わる。

これは“職場の空気”ではない。
構造だ。


「暗黙の不公平」がいちばん厄介

給料は同じ。役職も同じ。
それなのに、負荷だけが違う。

しかも厄介なのは、誰も悪意を持っていないこと。
善意の連鎖で、静かに壊れていく。

  • 「あの人なら大丈夫」
  • 「断らないから頼める」
  • 「あの人がやってくれると安心」

この“安心”の正体は何か。
一人の犠牲だ。


評価制度がない職場ほど、「評価しているつもり」になる

「うちは評価制度がないから平等」
……この発想が危険だ。

制度がない職場で起きるのは平等ではない。
“見えない評価”である。

得をするのは、声が大きい人、目立つ人、上に好かれる人。
損をするのは、静かに回している人、文句を言わない人、尻拭いをする人。

そして、損をする側が先に折れる。


“問題を起こさない人”ほど損をする理由

問題がない=追加タスクの余白、と見なされる

問題を起こす人は扱いが難しい。
上も慎重になる。仕事も減る。

一方、問題を起こさない人は扱いやすい。
だから仕事が増える。しかも際限なく。

これが現場で起きている逆転現象。
良い人ほど負ける設計だ。


退職の前に、必ず出るサイン

突然辞めたように見えて、前兆はある。

  • 相談が減る(諦めの始まり)
  • 提案が減る(変わらないと悟った)
  • 休みが増える(回復のための離脱)
  • 表情が薄くなる(感情の撤退)
  • 「大丈夫です」が増える(危険信号)

ここで「甘えるな」は最悪手。
必要なのは根性論ではなく、“設計の修正”だ。


辞めない職場が必ずやっている「見える化」

ポイントは一つ。
頑張りを“感覚”から“資産”に変えること。

① 仕事の棚卸し(誰が何を背負っているか)

管理者の頭の中にある“暗黙の役割”をすべて書き出す。
担当者名までセットにする。ここが出発点だ。

  • 緊急対応
  • 家族クレーム
  • 新人教育
  • 書類チェック
  • シフト穴埋め
  • 情報共有の最後の砦

「名前が出る」だけで、負荷は軽くなる。
見える化は支援の第一歩だ。

② “頼む基準”をルールにする

「できるからお願い」を禁止する。
代わりに、こう決める。

  • 教育は当番制
  • クレーム一次対応はローテ
  • シフト調整の窓口は時間帯を固定
  • 緊急対応は当番+手当で設計

ルールがないと、結局また“あの人”に戻る。

③ 承認を“気分”でやらない

褒めるのが得意な上司と、苦手な上司がいる。
だからこそ言語化する。

  • 週1回、管理者が「助かった行動」を3つ共有
  • 月1回、裏方仕事を拾って“名指しで感謝”
  • 評価面談で「具体的に何が良かったか」を言う

抽象的な「助かってる」は燃料にならない。
具体が人を燃やす。


“頑張る人”を守るのは、優しさじゃない

フェアな仕組み

ここまで読んで胸が痛いなら、それは健全だ。
ただし、痛いまま放置すれば次が来る。

次に辞めるのは誰か。
現場を回している、あの人だ。

人を変える前に、構造を変える。
それが経営の仕事である。

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